ペベリンスキーズ・ブログ

ペベリンスキーのチラシの裏。

VAPについて

VAP 人工呼吸器関連肺炎 ventilator-associated pneumonia

VAPを予防するには、口腔ケア時にオーラルバランス(ジェル状口腔湿潤剤)を使用する/呼吸器の回路交換をむやみに行わない/鎮静をかけすぎない/早期抜管を目指すことが有効。
http://pulmonary.exblog.jp/9859662/
http://www.h7.dion.ne.jp/~oka-shop/sub43.htm
またVAPを発症したら適切な抗菌薬の使用を行い、最初は広域のスペクトルの抗菌薬を使用し、徐々にde-escalationしていく。

VILIあるいはVALI 人工呼吸による肺損傷(Ventilator-induced(associated)lung injury

原因はVolutrauma(容量損傷)/atelectrauma(気道の周期的な虚脱)/Barotrauma(圧損傷)

  • Volutrauma(容量損傷)

ARDS患者の場合、患者の肺のCTを撮ってみると肺は以下の3つの状態が混在していることが分かっている。

完全に虚脱し呼吸に参加していない肺胞/吸気時には空気が入るが呼気時に虚脱する肺胞/正常な換気を行っている肺胞

※このため、ARDSの患者の場合は正常な人に比べて換気している肺胞の数が少なく、たとえ常識的な1回換気量で換気を行っていたとしても、患者に残っている正常な肺胞には過大な1回換気量になってしまう。

  • 気道の周期的な虚脱

ARDSで病的になった肺胞の一部は、換気にあわせて開放した状態と虚脱した状態とをいったり来たりする。この状態により生じる肺の損傷は atelectraumaと呼ばれている。

この、周期的に生じる気道の虚脱、開放は肺胞にダメージを与える。この運動により、肺胞内のサーファクタントは気管側に流出してしまい、虚脱した肺胞を再び開放するためにかかる圧力は肺胞の内皮細胞を障害する。

  • Barotrauma(圧損傷)

Volutraumaの考え方以前に主流だったのが、気道内圧が高いこと自体が肺に障害を与えるという考え方である。
肺に過大な圧力を与えると肺の内皮細胞は障害されるが、この働きが病的な肺でどれだけ肺障害の成立に関与しているのかはまだ議論がある。
原理的には、Barotraumaは1回高い気道内圧で換気しただけでも生じうる。

  • 炎症性サイトカインの増加

ARDSを生じた患者の多くで多臓器不全を生じるが、この原因の一つが人工呼吸器であるという考え方がある。最近の動物実験からは、人工換気により以下の2つの状態が引き起こされると考えられている。

炎症性サイトカインの増加/肺を通じた細菌の進入

ARDSの患者には多臓器不全が合併することが多いが、これは多臓器不全に伴ってARDSを生じるのではなく、 ARDSに陥った肺、あるいは人工呼吸器による肺障害自体が多臓器不全を引き起こす引き金になるという考え方がある。

ARDSやALIの状態になった肺には、好中球をはじめとした炎症細胞が多数浸潤している。このため、肺を通過した血液にはこうした細胞から分泌された炎症性サイトカインが多量に含まれ、これが多臓器不全を引き起こす原因の一つになっていると考えられている。

Ventilator associated lung injury - レジデント初期研修用資料(旧)
http://medt00lz.s59.xrea.com/blog/archives/2004/11/ventilator-asso.html

サーファクタント欠乏による無気肺への人工換気による肺損傷(athelectrauma, volutrauma)と、酸素毒性