IABPについて
IABPとは
IABP;Intra-aortic Balloon Pumping 大動脈内バルーンパンピング
心臓のポンプ機能が低下している患者をサポートするための補助循環装置。患者の大動脈内にバルーンカテーテルを挿入し、心臓の拍動に同期してバルーンを拡張・収縮させることで、心筋の酸素供給を増加させ、心筋の酸素消費を減少させる効果がある。心拍出量は15%程度増えるとされている。
IABPの効果1:Diastolic Argumentation
大動脈弁の閉鎖直後(DN点)にバルーンを拡張させることで、以下の効果を得る。
- 拡張期圧を上昇(昇圧効果)
- 冠血流量を増加(心筋虚血の改善)
*DN点(ディクローティックノッチ)
心臓の収縮期と、拡張期とを分ける点である。この位置は、心電図では T波の末端になるため、動脈圧波形のほうが位置を決めやすい。
IABPの効果2: Systolic Unloading
大動脈弁の開放直前にバルーンを収縮させることで、以下の効果を得る。
- 左室の後負荷*を軽減
- 心筋の酸素消費量を減少
http://www.eonet.ne.jp/~hidarite/ce/sinpai06.html
バルーンのデフレーションはR波の直後に行い、 バルーン収縮後の心臓の収縮期圧のピーク値が低くなるように設定する。
http://medt00lz.s59.xrea.com/iabp/node7.html
参考:後負荷(アフターロード)とは
心臓の収縮時に心筋に加わる負荷量で,心拍数,前負荷,心筋収縮力などとともに心拍出量を規定する因子の一つである。後負荷は,末梢血管抵抗,大動脈弁狭窄,血液粘稠度,動脈の弾性,心室容積などで規定される。一回心拍出量は前負荷と心収縮力が大きく後負荷が小さいほど増加する。一回心拍出量への後負荷の影響は,心筋収縮力が低下しているほど大きくなる。後負荷の指標には,左心室の収縮末期圧や全血管抵抗(SVR)がある。全血管抵抗はとくに重要であり,肺動脈カテーテルを挿入して心拍出量を知ることにより,{(平均大動脈圧−平均中心静脈圧)÷心拍出量 } × 80 から算出できる。後負荷低下をともなう病態には敗血症性ショック初期のhyperdynamic stateやビタミンB1欠乏による衝心脚気などがある。また心不全の治療では後負荷の軽減が重要であり,大動脈バルーンパンピングや細動脈血管の拡張薬が使用される。
http://www.jaam.jp/html/dictionary/dictionary/word/0305.htm
IABPの適応
- 急性心筋梗塞などによる心原性ショック(カテコラミン使用下でも肺動脈楔入圧18mmHg以上,収縮期血圧90mmHg以下,心拍出係数2.2L/min/m2以下)
- 人工心肺離脱困難
- 開心術後の心拍出量症候群(LOS)
- 切迫心筋梗塞
- 内科治療抵抗性の心室性不整脈
- 重症冠動脈バイパス手術や冠不全患者一般手術における予防的使用
臨床的指標は・・
- 尿量<0.5ml/h/kg
- 末梢循環不全(四肢冷感、チアノーザ)
参考:LOSの治療法
LOS;low output syndrome 低心拍出量症候群
心拍出量を定義する要素:収縮性、前負荷、後負荷、心拍数
- 前負荷を増やす・・輸液
- 後負荷を減らす・・血管拡張薬
- 収縮力を増やす・・カテコラミン、PDE阻害薬
- 心拍数を増やす・・テンポラリー
後は、輸血など。最終手段としてIABPやPCPSがくる。
http://fine.ap.teacup.com/cari_eli_forre/10.html
IABPの適応外
合併症
- バルーン穿孔(ラプチャー)
動脈内の石灰化病変部とバルーンが頻繁に接触して摩耗、もしくはバルーンが折れ曲がった状態でポンピングされたことでの疲労破壊。
- 下肢の虚血
- 血小板減少症
- 大動脈解離
- 血栓症
- 挿入部からの出血
IABP施行中の管理
*ACT
100-130秒程度にコントロールする。開胸術後の場合など、抗凝固療法は行わないこともある。
*下肢虚血対策
末梢循環の確認を怠らないこと。足背動脈の拍動有無、下肢の色調・温感・左右差を確認する。
*その他
カテーテルの留置位置の定期確認
各社のIABP
ゼオンメディカル;ゼメックスIABPバルーンカテーテル プラス
http://www.zeonmedical.co.jp/product/circulation/assisted_04/iabp_balloon_p_02.shtml
ゼオンメディカル;ゼメックスIABPコンソール908
http://www.zeonmedical.co.jp/product/circulation/assisted_02/iabp908_01.shtml
CPR時のIABP
Internalモード(心停止時、CABG用)を使用する。
Internalモードのメインの目的は、バルーン停止時の血栓形成予防です。心停止時には、ECGや動脈圧といったIABPが駆動するために必要な信号が失われてしまうため、IABPは作動することができません。その際、放置してしまうと十数分程度でバルーンの折り目に血栓が形成されてしまいます。したがって、定期的に膨張・収縮を繰り返す必要があるんです。何らかの原因で機器が停止、再開不能な場合も同様です。このときは、Internalも何も動作できないので、シリンジをヘリウムラインに接続して手動で膨張・収縮させます。
CPR時ですが、動脈圧トリガの方が良いでしょう。適切なCPRが行われていれば、その動脈圧をトリガして、拍出時にはバルーンが収縮するように動作します。ただし、それによってCPRの効果を増強するかと言われると、明確な証拠はないようです。各機器の取説を見ると、国内版には記載が無くとも、本国版にはそのような記述があることが多いです。あと、海外の施設の教育用使用などを見ると、CPR時は動脈圧トリガでとなっている施設は多いですね。
http://okwave.jp/qa/q4998685.html