ペベリンスキーズ・ブログ

ペベリンスキーのチラシの裏。

抗凝固剤

抗凝固剤は大きく分類して「ビタミンK依存性凝固因子合成阻害薬」「ヘパリン・ヘパリン類似物質」「体外で用いられる抗凝固薬」の3つに分類することができる。

  • ビタミンK依存性凝固因子合成阻害薬

ビタミンKの拮抗作用により抗凝固作用をもつ。効果が最大になるまでに投与を開始してから48〜72時間かかる。即効性を求めるならばヘパリンの併用が望ましい。ワルファリン、アセノクマロール、フェニンジオンなど。

  • ヘパリンとヘパリン類似物質

ヘパリン、低分子ヘパリン、メシル酸ナファモスタット、アルガトロバン。ヘパリンは豚や牛の腸から抽出される。アンチトロンビンIIIの活性作用により抗凝固作用を持つ。血管内投与を行う。
ヘパリンはタンパク質ではなく、多糖類の一種。
薬価はヘパリン<ローヘパ<<メシル酸ナファモスタット<アルバトロバン。

  • 体外で用いられる抗凝固薬

クエン酸・EDTA・フッ化ナトリウムなど。

ヘパリン

強力で安定した作用を持ち、安価であるため、抗凝固剤の代表として使用される。分子量は3000-20000。半減期は45-60分。作用機序はⅩaとⅡa因子へ作用。ヘパリンの投与量には個人差があるため、ACT(活性化凝固時間)にてモニタリングしながら持続投与する。血液透析時はACTは120-150秒でコントロールする。

*ヘパリンとHIT
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)。ヘパリン投与後5-14日後に発症。0.5-5%の頻度で発生し、動静脈内血栓を引き起こす。ヘパリンの投与中止にて速やかに改善する。血小板減少がみられたらHITを疑うこと。

低分子ヘパリン

ヘパリンを分画して得られた分子量4000-8000の低分子部分から構成される。Ⅱaにはほとんど阻害作用がなく、Ⅹaに対して強い阻害作用を持つため、体外循環路の抗凝固作用を強く保ちつつ、凝固時間の延長は軽度に抑える事ができるため、軽度の出血傾向のある症例でも使用できる。また、半減期がヘパリンの約2倍であり、透析開始時のワンショットのみで使用可能である。ヘパリンとは作用機序が異なるためにACTにてモニタリングできない。

メシル酸ナファモスタット FUT;フサン

分子量約500の蛋白分解酵素阻害薬。半減期が8分と短いため、抗凝固作用が体外循環路のみに限局、出血性病変がある患者様にも使用可能。

アルガトロバン

ATⅢを介さずに抗凝固作用を発現するため、ATⅢ欠乏症(70%以下)に適応。HITで用いられる。半減期は30〜40分。そのため出血性病変には不向き。

※透析中の薬剤投与は静脈側から!
http://www.nininkai.com/faq/topics_board.cgi?mode=cat&id=93
「安全性」の観点からですが、動脈側即ち血液ポンプの手前から薬剤を投入してしまうと、注入が完了しても血液ポンプの吸引力即ち陰圧の影響を受け、空気が混入してしまう恐れがあります。また、動脈側の血液ポンプの手前から点滴ポンプを使用した場合でも、血流が悪くなったりよくなったりを繰り返すことで、点滴ラインに血液が逆流して凝固や沈殿を起こしてしまうことがあります。従って、薬剤を安全に投与するには、静脈エアトラップチャンバー液面調整ラインもしくは静脈エアトラップチャンバー手前のサンプリングポートより、点滴ポンプやシリンジポンプを使用して注入する方法がとられます。

薬剤の「透析性」の観点から考えますと以下の通りです。現在臨床使用されているや薬剤は、ほとんどが分子量200〜1,500ダルトン(Da)の範囲に入ります。一方、透析で除去される物質は分子量に依存(分子量と物質の大きさは比例関係)しており、現在主流のHPMダイアライザーでは1,000ダルトン(Da)以下の物質は効率よく除去されます。一般的に、薬剤は血中に入ると蛋白(アルブミン)と結合して組織に運ばれます。蛋白(アルブミン)と結合してしまえば、分子量が数万ダルトン(Da)になり透析性がほとんどなくなりますが、動脈側から薬剤を投入してしまうと、多くが蛋白と結合する前にダイアライザーを通過即ち透析されてしまって、体内で薬剤本来の効力を発揮することができなくなります。

動脈側から投与する薬剤もあります。
①輸血
照射MAP等の輸血では、X線による血球の破壊によって輸血バッグ内は高カリウム状態になっていますので、透析で電解質補正(カリウム除去)した方が安全というわけです。

②血圧低下時の補液
透析中血圧が低下した場合等には、生理食塩水の補液を行うことがありますが、これは急速なボリューム負荷が目的ですので、透析の血液ポンプを利用するために動脈側から投与することになります。

③抗凝固剤
血液は異物に接触すると凝固を始めてしまうので、体外に導かれたら速やかに抗凝固剤を投与する必要があります。「メシル酸ナファモスタット」のような透析性のある抗凝固薬でも動脈側(エアトラップチャンバー前)より投与する必要があります。