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虚血性大腸炎

虚血性大腸炎 ischemic colitis;IC;イスケミック・コライテス

細菌や薬剤などの特別な原因が無いのにもかかわらず、腸管で突然、循環障害が起こり、腹痛などの消化器症状が起きる病気で、2つのタイプに分けられる。
Aタイプは、腸管の動脈である腸管膜動脈が閉塞するタイプと、Bタイプは閉塞はしないで血の巡りが悪くなって虚血が起きるタイプがある。Aタイプは、腸管が壊死して腹膜炎となり、ショック状態に陥り、死亡率は40〜80%の高率。Bタイプは、さらに一過性と狭窄型、そして予後の不良な壊死型に分けられる。
この一過性型と狭窄型が虚血性大腸炎といわれ、下行結腸からS状結腸にかけての左腹部に起こりやすい。50歳以上に患者が多く、特に女性によく見られる病気である。動脈硬化の高度な人に多いとされ、高血圧や糖尿病患者は要注意である。

症状

突然の激しい腹痛、下血、下痢で発症します。典型的には左下腹部の腹痛で、新鮮血の下血がみられます。悪心(おしん)、嘔吐、発熱が認められることもあります。直前に便秘をしていることが多いようです。

診断

多くの場合S状結腸や下行結腸に発赤、出血、浮腫、縦走潰瘍(消化管の縦方向に沿ってできる細長い潰瘍)などがみられます。注腸造影検査でも母指圧痕像(thumb-printing sign)といわれる粘膜の浮腫による変化や縦走潰瘍が認められます。まれに上行結腸や横行結腸に病変を認める場合もあります。
症状が典型的な時は容易に診断できますが、薬剤性腸炎、感染性腸炎、クローン病などとの区別が難しいことがあります。血液検査では白血球増加、炎症反応上昇がみられますが、虚血性大腸炎に特徴的というわけではありません。

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縦走潰瘍

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注腸造影における母指圧痕像(thumb-printing sign)

好発部位

虚血性大腸炎は大腸のどの部位にもおきますが、とくに多いのが下行結腸です。次に多いのがS状結腸直腸の境目です。これらの場所は、大腸を栄養する主な動脈のつなぎめにあたり、血流が乏しいためとされています
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治療

虚血性大腸炎は、重症度から一過性型、狭窄(きょうさく)型、壊死(えし)型に分類されます。約半数は一過性型で、短期間のうちに軽快し後遺症も残りません。狭窄型は急性期を過ぎたあと大腸に狭窄が残るものをいい、腹痛や下痢が続くことがあります。狭窄が高度の場合には手術が必要になることもあります。壊死型は比較的まれですが重症で、激しい腹痛から症状が急速に悪化します。敗血症やショック状態を合併して死に至る場合もあり、壊死した大腸の外科的切除が必要です。